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各位
2017年01月20日
国立大学法人北海道大学
日本特殊陶業株式会社
企業情報
「高靱性ゲルの軟骨応用部門」を共同で開設 人工軟骨材料の実用化に向け協創
国立大学法人北海道大学(総長:山口佳三/以下、北海道大学)と日本特殊陶業株式会社(会長兼社長:尾堂真一、本社:名古屋市瑞穂区/以下、日本特殊陶業)は 、北海道大学の産業創出部門制度を利用し、本年1月1日、北海道大学産学・地域協働推進機構に「高靱性ゲルの軟骨応用部門」を共同で開設いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。
1.背景と目的
北海道大学では、近年、高齢化に伴い増加している軟骨疾患に対し、患者さんのQOL(Quality of Life)向上のための新しい治療材料、治療方法の提供を目的とし、北海道大学のシーズ技術であるダブルネットワークゲル(以下、DNゲル)の人工軟骨材料としての実用化を推進しております。一方、日本特殊陶業では、ニューセラミックスを素材とした高い信頼性・耐久性を有する製品開発に強みを持ち、自動車関連事業を中心としたグローバルな事業展開を進める中、特に近年、「環境・エネルギー」「次世代自動車」「医療」の3分野を新規事業重点領域として、創業以来培ったコア技術を活かした新たなイノベーションの創出に取り組んでおります。
北海道大学と日本特殊陶業は、両者の強みを活かしながら協創することで、現代社会が有する高齢化、特に難治療性である軟骨疾患の患者さんのQOL向上に貢献するため、この高靱性ゲル軟骨応用部門を設置し、共同研究を推進することといたしました。
2.産業創出部門制度について
北海道大学と民間等外部の機関が、共通の課題について一定期間継続的な“組織対組織型”共同研究を実施することにより、社会的に高い付加価値を持つ産業を創出し、社会イノベーションを推進することを目的とする制度です。今回、この制度を利用し、DNゲルを開発した北海道大学大学院先端生命科学研究院と、人工骨などの整形外科向け医療機器の製造販売を手掛ける日本特殊陶業に加え、開発段階から臨床使用を見据えた研究を行うため北海道大学大学院医学研究科も含めた連携体制を構築し、DNゲルの人工軟骨材料として実用化研究を効果的に進めてまいります。
3.DNゲルの特長
DNゲルは、北海道大学大学院先端生命科学研究院 ソフト&ウェットマター研究室(教授:龔剣萍(グンチェンピン))にて開発され、人工軟骨材料の候補材として次に挙げる特長を有しております。
(1)機械的特性
一般的なゲルは、ゼリーや豆腐のように低強度、低弾性率、脆性的な材料であるのに対し、DNゲルは、“硬くて脆い高分子網目”と“柔らかくて
よく伸びる高分子網目”という性質 の異なる2種類の高分子網目が互いに助け合い、亀裂の進行を抑えることにより10~60MPaという非常に高い圧
縮破断応力を示します。これは、生体軟骨と比較しても遜色ない強度となります。加えて、DNゲルは水分を90%近く含んでおり、一般的なプラスチ
ック材料と比較し、軟骨と類似した非常に低摩擦な特性を有しており、人工軟骨材料の候補材として優れた特性を有しています。
(2)骨結合性
DNゲルの最表面近傍に骨伝導性を有するセラミックスであるハイドロキシアパタイト(以下、HAp)を形成させることで、ゲルのクッション性を維持
しつつ、骨との結合性を付与することができます。骨軟骨欠損部に補填した際には、軟骨下骨と結合し、周囲への脱落や転移を抑制することが可能です。
(3)軟骨再生能
通常、軟骨という組織には血管や神経等が存在していないため、外傷や摩耗により軟骨が損傷しても、皮膚などにできた傷のように自然治癒すること
はなく、現状、治療には困難が伴っております。しかし、ウサギの膝関節部分の骨軟骨欠損部にDNゲルを埋植した結果、正常な硝子軟骨の再生が確認さ
れております。これは、細胞を用いずに正常な硝子軟骨の再生が確認された世界で初めての例となります。
4.開発計画
本開発は、2017年1月より始動し、北海道大学大学院先端生命科学研究院及び医学研究科と日本特殊陶業で連携し、材料組成の最適化、製造プロセスや安全性の確認、術式や周辺デバイスを含めた開発に取り組み、2020年に臨床試験を開始することを目標として進めてまいります。
図1~3:北海道大学ホームページより引用
図4:Kitamura, Nobuto, et al. "In vivo cartilage regeneration induced by a double‐network hydrogel: Evaluation of a novel therapeutic
strategy for femoral articular cartilage defects in a sheep model." Journal of Biomedical Materials Research Part A (2016) のFIGURE 1
を一部改編して引用




PDF資料ダウンロード: 「高靱性ゲルの軟骨応用部門」を共同で開設 (PDF形式、397KB)